『natural source』(naturally番外編)
気づけば足は、窓際に進んでいた。
母上の声を背中に受けながらも僕は振り返らない。
覗き見、なんて最低なのはわかってる。
それでも、居ても立ってもいられない……。
「気持ちはわかるけど……」
そう言って隣に並んだ母上の手が僕に触れた。
そこで初めて気づいた。
僕の手が震えていたことに……。
「ごめん。情けないな」
「なに親の前でカッコつけてるの」
母上が笑いながら僕に言う。
震えていた手は、気付けば握り拳に変わっていた。
眼下に広がる景色の中にリンが現れる。
小走りに門に向かうリン。
その先には、貴族風の若い男が二人。
「マーセルの人間じゃないみたい」
「でも貴族っぽいな」
二人の前に立ったリンに一人は深々と一礼をしてみせた。
なんだ……この違和感。
そうか……侍女であるリンが貴族に頭を下げられている。
いつもと反対だから。
「あっ……」
一人、そんなことを考えているうちに、もう一人の貴族がリンの前に跪き、リンの手に軽く口付けた。
その瞬間、僕は窓を背にしていた。
呼吸が上手くできない。
動揺してるんだ……。
「どうする?」
「えっ?」
「見て見ぬ振りする?」
母上にされた質問に、上手く言葉が出せなかった。
母上の声を背中に受けながらも僕は振り返らない。
覗き見、なんて最低なのはわかってる。
それでも、居ても立ってもいられない……。
「気持ちはわかるけど……」
そう言って隣に並んだ母上の手が僕に触れた。
そこで初めて気づいた。
僕の手が震えていたことに……。
「ごめん。情けないな」
「なに親の前でカッコつけてるの」
母上が笑いながら僕に言う。
震えていた手は、気付けば握り拳に変わっていた。
眼下に広がる景色の中にリンが現れる。
小走りに門に向かうリン。
その先には、貴族風の若い男が二人。
「マーセルの人間じゃないみたい」
「でも貴族っぽいな」
二人の前に立ったリンに一人は深々と一礼をしてみせた。
なんだ……この違和感。
そうか……侍女であるリンが貴族に頭を下げられている。
いつもと反対だから。
「あっ……」
一人、そんなことを考えているうちに、もう一人の貴族がリンの前に跪き、リンの手に軽く口付けた。
その瞬間、僕は窓を背にしていた。
呼吸が上手くできない。
動揺してるんだ……。
「どうする?」
「えっ?」
「見て見ぬ振りする?」
母上にされた質問に、上手く言葉が出せなかった。