『natural source』(naturally番外編)
「……お嬢様」


「あっ、喋った」


「このような時間にどちらに?」


「……シューゴ兄様が熱を出したから様子見に……」



熱を出した兄が気になるらしく、様子見に一人で薄暗い廊下に出てきたらしい。


優しい子だ。


素直にそう思った。



「でしたら俺が……」


「でも、やっぱりここにいることにした」


「はぁ?」


「あなたの傍にいるよ。あなたの震えが止まるまで」



こう言って彼女は微笑み、俺の体に身を寄せてきた。




情けない話……精神的に弱っている今の俺には、この小さな人肌が心地良い。



俺の手を握って、俺の右側にもたれる。



彼女は何を言うでもなく、ただ隣で静かに目を伏せていた。


しばらくそうしているうちに、隣から寝息が聞こえ始めた。


無防備で可愛らしい寝顔だった。





あなたの優しさに俺は救われている。




……何度も。

……何度も。




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