『natural source』(naturally番外編)
マーセル城のとある一室。
侍女が用意してくれたお茶とお菓子を囲み、久々に顔を合わせた若奥様方が座っていた。
「リンさんがフルム国のお姫さまだったなんて、びっくりですよ」
「まぁ……侍女に出たのはフルムの古い習わしだったから。うちの国は王家の人間でも旦那様のコトは妻がやるのよ」
なるほどと手を打って納得してみせるアンジュの隣で、
「……良いなぁ。その習わし」
憂い顔でこう呟いてシュリがクッキーをかじった。
「シュリ様、どうしてですか?」
生まれも育ちも王家出身のシュリの発言が理解しがたく、リンは首を傾げる。
「色々苦労なさってるみたいなんですよ、シュリ様」
鍋を燃やしただの、洗い立てのシーツを砂まみれにしただの、どこからか漏れてくる噂にアンジュも気の毒そうに笑うばかりだった。
「ねぇ、二人とも」
「はいっ?」
何に気を悪くしたのか、食べかけのクッキーを皿に置いたシュリはリンとアンジュの顔をムッツリとした表情で交互に見やった。
そして、
「シュリ様も敬語もナシ! わたし義妹なんだからっ。そんなの付けたら返事しないわっ」
こう言って唇を尖らせた。