『natural source』(naturally番外編)
「あったあった、そんなこと……。ランシェなんてわたしのとこに来て……」
たまたま、いつもの注文聞きで城に来ていたアンジュを見るなり、
「おいっ。薬師」
「…………」
いつもなら、イヤミっぽく麻薬師麻薬師と呼んでからかってくるランシェが、大人しく薬師と呼んで来たからただ事ではない。
「一瞬で熱下げる薬を作れっ」
「妙に大人しいと思ったら……やっぱり熱があるんですね」
「バカ麻薬師、俺じゃねぇっ。熱があるのはシュリだ」
シュリが熱を出したコトは、さっき注文書を持ってきた執事から聞いていた。
侍医の話ではただの風邪。
薬を飲んで寝ていれば治るとのコトだったので、一般的な熱冷ましを三日分ほど出したところだった。
「解熱の薬ならさっき執事の方にお渡ししましたよ」
「どんくらいで治るんだよ?」
いつになく真剣なランシェの顔が新鮮で、思わず見入ってしまったのを覚えてる。
「ただの風邪ですから三日ほどじゃ……」
「一瞬で治せ」
「はぁっ?」
「一瞬で熱を下げろって言ってんだよっ」
そして、呆気にとられたことも……。