『natural source』(naturally番外編)
それから数ヶ月の後。
シュリが結婚して市井に降嫁することが、城で働く侍女たちの耳にも届いた。


「王家の身分を捨ててまで市井に降嫁するなんて……シュリ様はよほど貴族がお嫌いなのね」


「よくイタズラを仕掛けて追い返してたものね。いけ好かない貴族連中が水や粉だらけになるのは、結構気分良かったけど」


仕事の合間にされるシュリのおめでたい噂話に、侍女たちもそれぞれ思うところがあるらしい。


「いくら貴族がお嫌いだからって、なにも市井に降嫁しなくても……」


「それほどお相手の方のことがお好きなんですよ。身分や裕福な暮らしにも代え難いくらい」


「あら? まさか、アナタお相手が誰か知ってるの?」


まだ相手や嫁ぎ先については、何も明かされていない。


それでも彼女にはこの知らせを聞いた瞬間、ある人物の顔がすぐさま浮かんでいたのだ。


王家のお嬢様。
その地位を捨ててまで、シュリが添い遂げたいと思わせた相手が……。


「ただの勘です。……でも、当たってると思います」


シュリを溜め息混じりに受け入れるあの表情は、上辺では呆れながらもどことなく愛しさが滲んでいた。


……貴族が嫌いなワケじゃなく、あの人のことが堪らなく好きなんだ。


無邪気なシュリの笑顔を思い出して、侍女は小さく笑みを浮かべるのだった。




終わり

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