達人
わからない。

筋力がある訳ではない。

体格が大きい訳でもない。

優れた技術を持っているようにも見えない。

なのにあの殺気、あの覇気。

達人の強さの秘密とは一体何なのだろうか。

と。

「こんな所にいたんですか、丹下君」

空手の道着に身を包んで稽古に汗を流していた俺の背後から、達人が声をかけてきた。

何の事はない、全くの普段着だ。

「はい…稽古をしていました」

「それならば」

達人は軽い足取りで道場に入ってきた。

「少し手合わせをしましょうか。君もそれを望んでいるようだ」

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