達人
普段着のままの達人が俺の前に立つ。

身長は恐らく150センチ程度。

180センチの俺と比べると、男と女ほどの身長差がある。

筋肉も殆どついていない。

失礼な言い方だが、骨と皮だけといった様相。

鍛え上げ、全身無駄なく筋肉に覆われた俺の方が、外見で言えば圧倒的に強そうだった。

事実、俺は自分よりも大きく、筋肉の鎧に包まれた武道家と対戦して、幾度となく勝利を収めてきた。

試合でも、ルールのない喧嘩でも、だ。

その道理でいくなら、こんな小柄な老人に敗北などある筈がない。

…静かに構え、腰を落として重心を低くする。

「いきます、達人」

そう言う俺に。

「君はこれから殺す相手にわざわざ『いきます』などと言うのかね?」

『不意打ちで来い』

達人の眼がそう物語っていた。

…格上の達人に対して、俺が手心を加えるなど無礼千万。

本気で、殺すつもりで…!

俺は小柄な達人に突進を仕掛け。



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