達人
「さてと」

城山老人はのんびりと立ち上がる。

「体格も…力も…若さも…何もかも君が上回っているが、毒を盛られてはその有利も全て失う…年老いた私でさえ、君のような屈強な男をたやすく屠る事が出来る」

ニヤリと笑った城山老人。

その笑みに、凶暴な獣性が窺える。

この老人…ただの年寄りなどととんでもない。

老獪で、狡猾で、計算高い。

日常にまで戦いを持ち込む、まさしく『達人』…!

常在戦場、という言葉がある。

寝ている時も風呂でも便所でも。

常に己の身を戦場に置いているという意識の事だ。

城山老人…いや達人には、まさにこの言葉が当てはまる。

「…!」

俺は立ち上がれないまま、大量の汗をこぼす。

まずい…まずい!

殺られる!!

そう考えた瞬間。


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