恋 理~renri~
思 慕
お腹も満たされたので、展示会場へと戻った私たち。
「・・すごい人ですね」
「・・・だな?」
午後になると来場者は激増し、歩くだけで肩が触れてしまうほど。
これほどの混雑ぶりは、珍しいと思う・・・
「真咲は、見たいブースある?」
隣を歩く大和さんが、こちらを見つつ尋ねてきた。
「ハイ、切削加工機の新製品が・・・」
パンフを見ながら、私は笑顔で答えてしまう。
展示品の中で、最も期待していたのは“切断機”。
金属を削る機械だけど、特許取得した技術が搭載されていて。
それが今回、一般に初披露されるから。
「あぁ、やっぱり今回の目玉だしな!
ただ俺さ、あるブースを見ないとダメで・・・」
「えっ、そうなんですか!?
でしたら、そちらに行きましょう!」
優しい彼が、敢えて言うのはきっと、会社の絡みもあるだろう。
私なんて思いきり、個人的趣味も入っているし。
「いや、真咲は切断機を楽しみにしてたんだろ?
その間、別行動にすれば良いし・・・」
「でも、連れて来て頂いた身分なのに!」
勝手に行動しようなんて思えない・・・