恋 理~renri~
手を封じられてしまって、シートベルトを外せなくなった。
「っ…、離して下さい!」
「真咲、ホントにどうした?」
「っ・・・」
優しい声色が、私の心をグラリと揺さぶる。
「お願いです・・・」
どうにか発せたのは、か細い声でしかなくて。
自由の利く左手で払おうとしたけれど、もう敵わなかった。
無力な涙だけが、ポロポロと零れ落ちていく。
私は、弱くなんてナイのに・・・
カチャリ――
すると、シートベルトを外した音が響いたあとで。
グイッ――
次の瞬間にはもう、彼の胸へと引き寄せられていた。
途端に私を包むのは、爽やかなフレグランスの香り。
「ごめん・・・」
「っ・・・」
鼓膜を揺らすのは、優しくも切ない彼の声で。
貴方に謝られてしまったら、余計に惨めじゃない・・・