恋 理~renri~
仕方ないけど、会社に行くか…――
重い腰を上げて椅子から立ち上がると、亜実を連れてマンションを出た。
社内では身上を隠しているけれど、短時間の事に泉を頼るのも悪い気がして。
誤魔化せば良いか…、そんな気分で亜実の手を引いて駅へと向かった――
「それでね、りなちゃんがね?」
「うん、どうしたの…?」
休日は滅多に乗らない、会社へ向かう方面の電車内でお喋りをしていた私たち。
ニコニコと笑って、保育園での出来事を嬉しそうに話してくれる亜実の表情で。
忙しさに感けて、大切な亜実間で蔑ろにしていた事に気づかされた。
“真咲ちゃんはお仕事が大変だもん”
私の表情で読み取ってしまうのか、忙しい時は特に甘えたりしない。
甘えたい盛りで母を亡くして、愛情に飢えている筈なのに…。
いつも寂しい思いをたくさんさせている筈なのに…。
亜実の聞き分けの良さに、甘えていたのは私なのに・・・
今日はもう仕事は止めて、亜実と遊びに行こう――
懺悔したい気持ちを笑顔に変えて、そんな事を考えて電車に揺られていた。