恋 理~renri~


何かがあった訳じゃない、何も無かっただけなのに・・・



暫し流れる沈黙に息苦しさを感じつつ、でも終話ボタンは押せなくて。



辛いと思いながらも、それでも大和が好きだと思い知らされるだけ…。




「真咲、知ってるか…?

“何でもない”って、辛い時に無意識に使う言葉ってコト」


すると幾許か置いたあと、“何があった?”と付け加えて尋ねてくれる。




「…っ、大丈夫・・・」


その問い掛けが嬉しい反面、やっぱりキュッと心が苦しくなっていく。




だって何を説明して、貴方に聞けばいい・・・?



答えるべき私が黙り込んだせいで、電話の意味をなくす程の静けさ。



その中で、ハァ…と、溜め息とも取れない息遣いが電波を通して伝わってくるから。



携帯電話に熱が籠りそうなほど、知らぬ間に手の力を入れて握り締めていた。





「…分かった、言わないなら直接会おう。

明日の夜に必ず、真咲のマンションに行くから」


その空気を裂くように、いきなり提案を持ち掛けてくる大和。




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