恋 理~renri~
もし母が健在で、冷めた私が結婚するなんて言ったら気絶モノだよね?とか。
きっとこの世の誰よりも喜んでくれただろうな、なんて思えて仕方なかったの。
母の死を受け入れてはいても、やっぱり家族を失った悲しみは消えないから…――
そんな複雑な心境を悟られないよう、大和のお母さまにニッコリ笑っていれば。
「それじゃあ、早くお家に入りましょ?
お父さんもずっと待ってるのよー、ほら亜実ちゃん行こっか!」
「うん!」
しっかり者というかパワフルというか…、華奢な容姿とは裏腹すぎるけど。
エネルギッシュなお母さまから、お家の中まで温かい事が容易に想像がついた。
「ていうか…、こんなトコで立ち止まらせたのは母さんだろ?」
亜実の手を引いて歩き始めたお母さまに、背後から呆れた口調で言う大和。
「不肖息子、ウルサイよ!」
「ハイハイ」
「イチイチ小言ばかり言ってると、真咲ちゃんに愛想尽かされるわよ。
そうよねぇ、真咲ちゃん?」
「アハハ・・・」
同意に困るジョークに苦笑を浮かべれば、隣からグイッと肩を引き寄せられる。
「真咲…、そこで笑うか?」
「ええ!?だ、だって…」
「その反応も、地味にヘコむんだけど…」
覗き込むように距離を詰め、ジーッと見つめて来る大和に不意にドキドキして。
そのままお家へと歩き始めた彼に連れられ、ようやく私たちは目的地に到着した…。