恋 理~renri~
窓際でずっとキャッキャッと騒ぐ亜実とは対照的に、私はすっかり項垂れていた。
「…もう恥ずかしすぎる」
「なんで?」
ポツリと呟いた言葉を見事に拾ってくれた大和は、こちらの様子を窺って来る。
「だって…、全然上手く出来なくて…。
私…、いつもはこんな風じゃないのに…、どうしてかな…?」
肉厚で座り心地の良い座布団で正座をしながら、ホントは頭を抱えてしまいたい…。
仕事では殆ど失敗とは無縁に来ているし、それこそ学生時代も平穏無事なモノ。
…だというのに、大和に出会ってからはずっと失敗とお付き合いしてる気がする。
今日こそは特に気合を入れて、絶対に滞りなくご挨拶しようとしてたんだけどな…。
「寧ろ良いんじゃないか?」
「・・・え?」
実にアッサリ一笑したあと、予想外の言葉を発した彼とバッチリ目が合った。
「それって、真咲が俺たちに気を許してくれてる証拠だろ?
失敗しない人間なんてあり得ない…、だから真咲は、相当慎重に生きていたと俺は思う。
今までが“完璧すぎた”んだよ…、これからはもっと、楽に生きて欲しいな――」
「…ホントに、これで良いの?」
大和に出会う前の私だったら、絶対に受け入れる訳の無い諭しに尋ね返せば。
「当たり前だろ?項垂れてる真咲の方が可愛いよ」
「・・・29の女が?」
「ハハッ、照れない照れない」
やっぱり彼に出会ってから、私の中で着実に色々なモノが変わっているのね・・・