恋 理~renri~
そんな顔色の変化を読み取られたのか、ハハッと笑い声を上げたお父さまと大和。
「因みに種明かしをすれば…、真咲の事も前から知っていたりするんだな」
「え!な、なんで!?」
何というか知らない事だらけだった大和の発言に、今日は驚かされてばかりだ…。
「平蔵と会うとね、時々真咲ちゃんの話をしていたんだよ」
「え、か、会長が、ですか…?」
「あぁ…普段は仕事の話は一切しないヤツだし、本当に珍しい事なんだが。
負けず嫌いで、走り回って…、若い頃の自分にそっくりだって言うんだよ。
違うトコロといえば、彼女の方が遥かに賢いってトコかな?ってね…」
会長とはそこまでお会いする機会もないけれど…、お父さまの言葉が胸を熱くする。
ソレがたとえお世辞だとしても、嬉しさと気恥かしさが複雑に絡み合った心境だ…。
「そんな訳で…大和が結婚したいと思った子が、キミで嬉しかったよ。
私と母さんはヤツが絶賛する、実物の“真咲さん”を楽しみにしていてね。
今日は実際に会ってみて、大和の惚れ込みようにも納得したよ…」
「…幻滅されずに安心しました」
私は父という存在がよく分からないし、ご両親の定義もまったく分からないけど。
裕福だとか何も関係なく、大和のご家庭は優しさで包まれていると思ったのに…。
「真咲さん…申し訳ないが、ひとつだけ聞かせて欲しいんだ。
ご両親は亡くなっているというのは、本当なのかね――?」
「・・・っ」
それまでのにこやかな表情から、真剣な眼差しに変わったお父さまの問い掛けは。
遠回しに“私の秘密を知っている”と、ハッキリ尋ねられたような気がした・・・