恋 理~renri~
亢 進
ご両親…か…、もちろん母一人から自分が誕生したなんてあり得ないけど。
私はアノ人なんて親と認めたくない…、ううん、始めから無いモノにしたい。
生まれた時から父親はイナイ…、だって私たちはずっと3人で・・・
「…差しでがましいとは思うんだが、小耳に挟んだ以上ね…」
「い、いえ・・・」
どう答えて良いのか思案しながらも、グルグル駆け巡る不安に苛まれていて。
気まずさから押し黙っていれば、気遣ってくれるお父さまに悪気は無いと思う。
「真咲…、無理しないでいいから」
「ううん、大丈夫…」
思い出すのも嫌なアノ人のせいか、どうやら顔から血の気が薄れていたようで。
心配そうに窺ってきた大和に笑顔を見せて、喝を入れる為に大きく息を吸い込むと。
私を待つようにして、ジッとこちらを見据えているお父さまと焦点を合わせた。
「…どの辺りまで、ご存知なのでしょうか?」
「うーん、何と言っていいのかな…。
あくまで私は、また聞きしたに過ぎないからね」
高名なお父さまだからこそ、ありふれた信憑性の薄い話は信じない筈だし。
ここでも苦笑して言いかねるあたり、随分と深い話を知っていると思う。