恋 理~renri~
それまでの日々の努力ではなく、単に人の上に立つアノ人の血を受け継いだだけ。
情に脆い母とは違い、ヤケに冷めた性格をしているのはアノ人の血を引いたから…。
「…その方と母は、母が奨学金で入学した、ある有名私大で知り合ったようです。
ですが…一般家庭で育った母と、その人との交際は認められなかったようで…。
母が妊娠したのを機に、認知をしない代わりに一生の生活を約束されたそうです。
そうして私が生まれたそうです…、いわゆる私は…“認められない子”ですね…」
とうの昔に答えの出ていたフレーズとはいえ、口にするのはやっぱり辛くて。
梨園は一般人の想像を絶するほど、伝統を重んじる厳しい所と後々調べて知ったけど。
だけど母を捨てたのはアノ人なのに…、ずっと母を囲って苦しめていた事が許せない。
「真咲…」
ポツリと苦しげに名を呼んだ大和が、ギュッと私を自分の方へと引き寄せてくれた。
まだまだ話さなきゃいけない事があるのに、勝手に流れる涙が邪魔をする…。
「真咲は認められない子なんかじゃない。
そうやって卑下するなって、いつも言ってるだろう?」
「っ…、ちが…、わたし…っ」
「違わない…!真咲は真咲だろう?そうやって自分を貶して苦しめないで欲しい。
それにお母さんにも失礼だよ。“愛されて育ったから今がある”って思わないか…?」
「う…っ、ううっ、ごめ、なさ…っ」
母とまったく似ていない時点で分かっていたけど、実際のアノ人の写真を見た時は。
写真といっても雑誌だったけど…、あまりに似ていて父親といえない事が悲しかった。
そんな本心を隠す為に鉄壁の鎧を被って、独りで虚勢を張っていたのに・・・