恋 理~renri~
大和の実家をあとにした私たちは、ちょっと寄り道をするつもりだったけど。
後部座席に座る亜実がすぐに眠ってしまった為、そのまま東京へ向かって走行中。
私の方といえば疲れたというより、優しいご両親にホッとさせられた感じだ・・・
「…鎌倉って大学時代に行ったきりだったけど、やっぱり素敵な所だね。
落ち着いた感じがして、街並み見てるだけで癒されるもの…」
よく江ノ電に乗って街並みを散策したり、夏には由比ヶ浜へ海水浴に行ったりして。
思い出してみると、何故かしら泉が失恋する度に遊びに来ていたんだよね…。
「俺も今はコッチの友人に会いに来たり、同窓会で帰るくらいだけどさ。
実家は大切だって思わされたよ…これからは3人で遊びに来ような?」
「うん!穴場スポットとか案内してね?」
前方を見据えてハンドルを握りながら、ここでも嬉しい言葉を掛けてくれるから。
ボンヤリながら考えてた事は跳ね除けられて、ふふっと笑いを返せていたのに。
「ハハッ、今から地元のヤツにリサーチしとく!
…それとさ、親父の言ってた事を気に病む必要は無いよ。
真咲からは断り難いだろうし、そうハッキリ俺が言うから。な…?」
やっぱり流石というか…、大和の相手を気遣う話し方に心が落ち着いていく。
「…大和、その事なんだけど」
「ん?」
だから決まった答えから逃げ出さないよう、ギュッと拳を作ってきり出すと。
「私…、前に進んでみても、…いい?」
迷うよりも先ず、“もう逃げたくない”という感情が、そう口走らせていた・・・