恋 理~renri~
真 実
アノ人を憎んで逃げているだけでは、今までと何も変わらない“独り善がり”だし。
周りの優しさにようやく気づけた今こそ、醜い感情とオサラバして進むべきで。
こんな私を広い心で受け止めてくれた大和の為にも、なおさら強く生きたい・・・
「…真咲、緊張してる?」
「ううん…って言ったら、嘘になる」
すっかり無言と化していた私の顔を窺う大和に、苦笑しながら答えてしまう。
彼の実家へご挨拶に向かった帰りの車内で、“前に進みたい”と言ってから2週間後。
互いに休日である今日は、まったく所縁の無いある場所へと2人で向かう最中だ。
こんなにも早く事が進んで驚きは隠せないけれど、寧ろ良かったのかもしれない。
“鉄は熱いうちに打て”というように、気持ちが逃げてしまう前の方が良いもの。
「大丈夫、俺がいるから」
「…うん、ありがと」
それをお見通しと言わんばかりに、キュッと手を握られると心が落ち着いて。
彼の手が何かの拍子で引き返したくなる、心まで掴んでくれるような気がした…。