恋 理~renri~


あっけらかんと言い放ったお義母さんの行動は、ソレからが頗る早くて。



私と亜実が大和のマンションへ引越すからと、処分予定だった自宅にやって来たのだ。




“亜実ちゃんのお世話を私が見れば、真咲ちゃんは残業だって出来るし。

ついでにお母さんの思い出が詰まったマンションだもの。

今すぐ処分するなんて勿体無いと思うわ。だから、私が住んでも良い?”


お義父さまが県会議員を引退したあと、毎日にハリが無いと嘆いてたらしいけど。



鎌倉のお家の方も、お義父さまの跡を継いだ議員さんに任せたからとか何とかで。



地元を離れられないお義父さまを残して、東京へとやって来てくれたのだ。



この行動力には実の息子である大和も、唖然としていたんだよね・・・




そのお陰で私は今まで持ち帰っていた仕事を、部下へと任せられるようになって。



確かに一日の残業量は増えたけど、休日と仕事の切り替えがハッキリさせられた。



それにいずれは辞める事になるから、後輩指導にも積極的になっているこの頃だ…。





「それじゃあ真咲ちゃん、あとでね」


「はい、ありがとうございます」


そろそろ時間だと係の方の案内で、お義母さんが笑って席を立つと。



「真咲ちゃん、ばいばい」


「亜実もありがとう、またね」


天使の笑顔で手を振ってくれる妹に、私もまた笑顔で手を振り返した・・・




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