銀の月夜に願う想い
レリアに部屋に案内されたときから、もう殆ど理性なんて残っていなかった。


裏切られたのは事実だけど、だからこそ彼女の本当の気持ちを確かめたかった。

本当に僕のことがどうでも良くなったのか。他の男の子供を身籠っていて抱かれたら、彼女はどんな反応をするかとか。
知りたくて無理矢理抱いた。



でも予想と彼女の実際の行動は全く違った。


罪悪感一杯の目で見られると思っていた。それで謝られると。
でも彼女の目には前と同じ愛情が詰まってる気がして、まだ僕のことが好きなのかと期待してしまった。


でもそれが有り得ないことだと分かっていたから無理矢理抱いてやった。



でも、彼女はこれと言った抵抗なんてしなかった。むしろキスさえねだってきた。

これではまだ僕のことが好きみたいじゃないか……。



張り裂けそうな想いを抱えながら彼女を抱いた後、すぐに離れようと思った。
今昔の気持ちを思い出したら絶対に抑え込めない気持ちを封印していた時に戻れないと分かっていたから。


でも彼女に呼ばれて抱き締められたとき、もうダメだと思った。


他に男がいるならこっぴどく突き放してくれればいいものを……


そんなふうに思いながら彼女とのキスに酔いしれ、気づけば夢の世界に誘われていた。

あれだけ悪戦苦闘して出来なかったことが、彼女がいれば出来る。
やっぱり離せないと思った。



でも、起きたとき彼女はいなかった。絶対に傍にいると言っておきながらいてはくれなかった。
だから思わず考えるより先に体が動いたんだと思う。



彼女を探して走った。柄になく肩で息をしながらホールに入って彼女の姿を探す。
途中何人かに声をかけられたけど無視した。


どうしてここにいるのか分かったのかは分からない。でも直感が訴えていた。


やっと見つけたと思ったとき、彼女の前にはセヘネの母親がいた。

しまったと思って叫ぶ。


彼女の金色の瞳がこちらを向く。桃色の唇が弧を描いたのを、覚えている――
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