銀の月夜に願う想い
「さぁ、セヘネ様。私はこれから、あなたが信じて疑わなかったものの本性を暴いて差し上げましょう」


ハッとして後ろを見れば、いつの間にかセヘネがエメフレアと一緒にいた。
背筋に冷たいものが流れたのが分かる。


あと数分で日が暮れる。そうしたらあんなに慕われて嬉しがっていたレリアを、セヘネは憎みの対象として見るだろう。

婚約者の心を奪っていた『レーア』。メレイシアのような色彩を持った、セヘネの敵。


「レーア……!!」


日が暮れる前に取り戻さないと。そうして彼女の『変化』を隠さねば。そうでないとレリアの笑顔が一つ、失われる。


「レ…」

言い終わる前に、見た。日が山に隠れてしまうところを。


蝋燭の日が会場を明るく照らしている。だから、ハッキリ見えた。


レリアの自慢の蜂蜜色。これ見よがしなその輝かしい髪が、夜の色を集め始めるところを。


会場内の誰もが息を飲んでいた。
先程までまるで、光神ロアルの加護を受けたかのような昼の美しさを持っていた少女が、闇の住人になるところを。

蜂蜜色が漆黒に変わる、有り得ない瞬間を。


「あ……」

顔から血の気を引かせたセヘネがその場にしゃがみこむ。それをエメフレアは心配そうに見た。


「美しいでしょう…?」


うっとりとした響きを孕むその声に、ルゼルは彼を見た。



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