銀の月夜に願う想い

「いくら光神ロアルの加護があるからといって、調子にのってはいけませんよ」

「ロアルは関係ない。自分の問題くらいは自分で何とかするよ」

今までそれをしてこず、自由奔放に過ごしていたから心配なのだが。


「……付いていればいいんですね」

「うん。でも少し助けてやってくれる?レーアお茶会とか全く縁なしだったから、作法とか全然知らないと思うんだ」

「分かりました。名前のほうは?」

「ああ……」

この前の夜会ったとき、セヘネには夜の姿で本当の名前を言ってしまってある。だから違う名前を用意しなければいけないのだ。

「何か考えてあると思うよ。レーアだから」

「そうですか?」

レーアも幾分マイペースなところがあるから心配だ。
念のため二、三個用意しておこう。

「他に何かありますか?」

「別にない。仕事のほうは僕がやっておくから心配しなくて良いよ」

「それは心配していませんが……」

何せこの王子、十七歳まで自由気ままに過ごしていたくせに政治力が半端ないのだ。他のものも任せれば出来ないことはないだろうが、やる気がないから今の量で済んでいる。この素質がバレれば、今の三倍は仕事の量を増やされることだろう。

これは他の王子たちにも見受けられないから、多分元々の素質だと思う。
母親も随分と賢才だったというから、それを受け継いだのだろう。


「あ、そうそう」

思い出したようにルゼルが振り向く。
今度は、先程とは違って本気で殺気のこもる目で睨み付けてきた。


「エスコート目的以外でレーアに触ったら、殺すから」

(こわっ……!)

無駄に綺麗な顔つきをしているだけ、迫力がある。

王子の本気を垣間見た護衛官は、絶対逆らうことはしないほうがいい、と思った瞬間だった。


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