銀の月夜に願う想い

王子が去った後、着替えた私はいつも同じ行動をする。ただベッドに座って窓の外を見るだけ。

(外からは鳥かごの中に捕まった鳥が、哀れにも死に行くのを待っているだけに見えるのでしょうね……)

実質、今の現状はそうなのだ。私は囚われた鳥。
飼い主が開けてくれなければ外に自由に飛ぶことすら出来ない、可哀想な鳥。



ここはこの国の王宮内にある、一つの塔。

王宮と同じつくりのために内装はとても華美で見目に麗しい。まるでお姫様が暮らすような部屋だ。
でもここは『牢獄』。それ以外の何者でもない。

外の世界とは完璧に隔離されていて、塔の周りにはたくさんの衛兵が逃げ出さないか見張っている。

逃げ出しなどしない。だってここにはあの人がいる。私の大事な王子様が。

でもその人が来るまでは一人だけ。何をすることもなく、囚われているだけの身だ。

愛情など全く感じさせない寒い部屋。
なんの音もしない寒い空間。



昔と同じ。



(私はお母様との約束を忘れてはいけない……そしてあの人を愛することをしてもいけない)

本当に、よく似てしまった。
あんなにこんな辛い恋はごめんだと思ったのに。いつの間にか同じ境遇に陥っている自分がいる。






『君はどうして僕に心をくれないの?』






あなたの言った言葉が痛い。

私はあなたを愛しているわ。でもそれは『いけない恋』だと知って?

愛したいのに愛せない。
その心の葛藤が愛を囁くこの口を動かなくさせる。


「愛しちゃいけないの……」

だって私はあなたとは正反対の性質を持つ、闇の世界に住む女神の化身だから。




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