銀の月夜に願う想い
「……四年も経っているからてっきりもう許しているのかと思っていました」
『甘いよ。メレイシアがそんなに簡単に許してくれる訳がない』
彼女もまた、時の流れに逆らって生きるもの。永久を生きなければいけない彼女はあまりにも気紛れになりすぎてしまった。
『いつか君もあんなふうになるのかなぁ』
「なってほしくはないのですか」
『君には今のまま純粋でいてほしいな。可愛い妹のように』
「妹、ですか……」
レリアはメレイシアの娘であって、妹ではない。でも事実そうではないから、彼にとっては妹でしかない。
(報われないわ…)
レリアの初恋はこの人なのに。それに気付いてさえもらえない。
神なのに神らしくない。
私は、こういうところに惹かれたのかもしれない。
『どうしたの、レーア』
首を傾げて淡く微笑む彼は、とても綺麗だ。女のレリアでさえ羨ましく思うほどに。
「いいえ」
この人がどうしてレリアを人間の世界に寄越したのかは分からない。
でも彼のことだからきっと理由はあるだろう。何の理由もなしに恋人を怒らせるようなことをする人ではないから。
「今日はどのようなご用件でいらっしゃったのですか?」
『うん、今日は……忠告を、しようかと思って』
「忠告……?」
聞きなれぬ言葉にレリアは目を瞬いた。ロアルの目には憂いが浮かんでいる。
『闇の者が夜の闇と共に君を見に来るだろう。メレイシアの命令で』
「お母様の?でもお母様は何でも分かるはずです」
『俺にも彼女が何を考えているのかなんて分からない。神の中で一番気紛れな人なのだから』
神の中で一番綺麗で神秘的で、清らかであり、人からは独立した神。ロアルでさえ敵わない神の鑑(かがみ)とさえ言える存在。
レリアの、憧れの人。