銀の月夜に願う想い
レリアと過ごす時間があと一年しかないという時に、何故こうも邪魔が入るのか。せめて最後の一年なのだから思い切り甘えて、二人のラブラブっぷりを見せびらかして、昼の彼女も夜の彼女も同じように城の中を歩かせて、自分の想う人はこんなにも綺麗な人なのだと言いたかった。
なのに。
(何で邪魔が入るかなぁ…)
本気でキレそうだ。
というか何で闇の眷属が来るのだろう。約束の時にはまだ猶予はあるはずなのに。
今日はレリアのところにはいけないかな、と思って憂鬱になるのだった。
そうやってルゼルが二人に笑顔を振りまいている時、例の護衛ユヒスは王子をじっと見ていた。
(この男の何処が良いのだろう)
先程からずっと考えているが、全く答えに辿り着かない。
一体レリアは彼の何処が好きになったのだろう。
(見ていれば普通の人間と一緒だが…)
ロアルの加護を持つ者だと言うから期待して来たのだが、そこら辺の男と違うところは見受けられない。
(レーア姫は彼の何処が好きになったのだろう)
何度考えても分からない。
ユヒスの瞼の裏に浮かぶ彼女は、昔と全く変わっていなかった。長い金髪、澄んだ金眸。きっと夜にはますますその美しさが極まることだろう。
(姫君……)
昔の彼女の姿がよみがえる。彼女はまるで昔と変わっていない。変わったところがあるとすれば、その輝きだ。彼女の纏う輝きが増した気がする。
(メレイシア様…)
あなたの愛する娘君は必ずあなたの元へお返しいたします。
後一年……彼女の望むようにしたら、彼女は闇の住人になるのですから。
今回は下見と顔合わせだ。レリアが帰ることを望んでいたら連れて帰るつもりだったが、生憎彼女はここにいることを望んでいるようだ。
(まあ良い)
どうせあと一年なのだから。
その現実が変わることは、ない。