ミュージック・ラブ〜君がくれた歌〜

『見返りを求めない無償の優しさか…俺には無縁だな』


シュンは笑った。


『それにケイゴはさ、自分と関わった人はみんな幸せになって欲しいって思ってるみたいなんだ』


『自分が1番って考えの奴が多い世の中で、そんな風に他人の幸せ願える奴なんて今時珍しいよな』


『変わり者って言っちゃえばそれで終わりなんだけど、ケイゴは他の人にはないモノ持ってるんだよね』


『レイナ。お前ケイゴの事よく分かってるんだな』


シュンは起き上がった。


『私ね、実は3年前に一度ケイゴに会ってるんだ。もちろん、ケイゴは知らないけどさ』


『え!?去年の冬が初めての出会いじゃなかったのか?』


シュンは少し驚きながら言った。


『うん。3年前の12月22日に1度会ってるの』


『12月22日って…レイナの両親の命日にか?』


『あの日は雪混じりの冷たい雨が降ってた。私は事故現場に花を供えてたんだけど、その道沿いに小さな子犬が段ボールに入れられて捨てられてたの。目を止める人はいても、みんな通り過ぎて行く人ばかりだった。でもケイゴだけは違った。ケイゴは自分のさしてる傘を寒さに震える子犬にさして…こんな事くらいしか力になれなくてごめんなって涙を流したの。そして傘を置き去りにして、自分は雨にうたれながら帰って行ったの』


レイナはあの日を思い出しながら言った。


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