ミュージック・ラブ〜君がくれた歌〜
会場内はフレンズのデビュー曲で包みこまれ、観客たちはフレンズの曲をただ一心に聴いていた。
そして、曲が終わった。
メンバー全員は一礼をして小林誠吾と一緒にまた車に乗り込み、颯爽と会場を後にした。
帰りの車内では、メンバー全員手応えとやり切った感で一杯だった。
『ふぅー、すげー緊張したな。でもまさかあんなに観客がいるとは思いもしなかったな。俺たち出だし好調だな』
シュンは浮かれていた。
『お前ら調子に乗るな。今日入ってたあの観客は、俺が用意したエキストラにすぎない』
浮かれるメンバーに小林誠吾は冷たく言い放った。
『えー!?』
メンバー全員その言葉に驚いた。
『無名のお前たちのライブに、あんな大勢の人が集まる訳がない。例えミュージックブルーレコードのイチ押しだとしてもな』
小林誠吾は忠告した。
『そ、そんな…』
シュンはガク然とした。
『じゃあ、一体何のためのライブだったの?』
里菜は不満げに尋ねた。
『そうだな、お前達の実力を見るためだ。それにあの会場にはな、俺が用意したエキストラ以外にも記者が紛れていた。全くの無名バンドにあれだけの観客…間違いなく記者は取り上げるだろうな』
小林誠吾はそう言ってニヤリとほくそ笑んだ。
『も、もしかして、それが狙いだったの?』
里菜は驚きながら尋ねた。