ミュージック・ラブ〜君がくれた歌〜
『キミのなんだ。そうだ、もし良ければ一曲何か弾いてくれないかな?』
ケイゴがそう言うと、女性はギターを手に取りあぐらをかいてその場に座った。
『一曲だけね…』
彼女はギターの弦を優しく掻き鳴らし、そっと歌い始めた。
彼女の歌声は、変わらない毎日に疲れきっていたケイゴの心の中に響き渡った。
チラつく雪の中でギターを奏でる彼女の姿はまるで、空から舞い降りた天使のようにケイゴの目には映った。
女性が歌い終わるとケイゴはニコッと笑い、盛大な拍手を贈った。
『ありがとう。君のお陰で何だか少し元気が出た気がするよ。歌、凄く良かった。僕、ケイゴって言うんだけど君の名前は?』
ケイゴが尋ねると、女性は一瞬戸惑いを浮かべたがすぐに答えた。
『レイナ…私の名前はレイナ。歌を聴いてくれてありがとうございました』
そう言ってレイナはケイゴにピョコっと頭を下げた。
『レイナはいつもここで歌ってるの?』
ケイゴが尋ねると、レイナは片付けたギターを抱え、ケイゴにニコッと微笑んで立ち去った。
運命が導いたかのような二人の出会いは、粉雪が静かに舞う寒いそんな夜だった。