ミュージック・ラブ〜君がくれた歌〜


『キミのなんだ。そうだ、もし良ければ一曲何か弾いてくれないかな?』


ケイゴがそう言うと、女性はギターを手に取りあぐらをかいてその場に座った。


『一曲だけね…』


彼女はギターの弦を優しく掻き鳴らし、そっと歌い始めた。


彼女の歌声は、変わらない毎日に疲れきっていたケイゴの心の中に響き渡った。


チラつく雪の中でギターを奏でる彼女の姿はまるで、空から舞い降りた天使のようにケイゴの目には映った。


女性が歌い終わるとケイゴはニコッと笑い、盛大な拍手を贈った。


『ありがとう。君のお陰で何だか少し元気が出た気がするよ。歌、凄く良かった。僕、ケイゴって言うんだけど君の名前は?』


ケイゴが尋ねると、女性は一瞬戸惑いを浮かべたがすぐに答えた。


『レイナ…私の名前はレイナ。歌を聴いてくれてありがとうございました』


そう言ってレイナはケイゴにピョコっと頭を下げた。


『レイナはいつもここで歌ってるの?』


ケイゴが尋ねると、レイナは片付けたギターを抱え、ケイゴにニコッと微笑んで立ち去った。


運命が導いたかのような二人の出会いは、粉雪が静かに舞う寒いそんな夜だった。




< 5 / 232 >

この作品をシェア

pagetop