ミュージック・ラブ〜君がくれた歌〜
『俺には妹がいたんだ。親に捨てられた俺たち兄妹は二人で生きて来た。だけど、妹が病気になって…助けるためには高額な手術費が必要だった。だけど、その頃の俺はまだ全然売れないただのドラマーだった』
里菜はじっとキースを見つめていた。
『そんなある日だった。俺が代理でドラマーを勤めた、あるバンドの未発表の曲を見つけたんだ。俺は見た時、この曲は絶対売れると確信して…それを盗み、あたかも俺が書いたかのようにレコード会社に売り込んだんだ』
里菜は黙って話を聞いていた。
『案の定、その曲は認められ…売れまくった。そして俺は若き天才プロデューサーと言う名声と大金を手に入れた。だけど、遅かった…。妹の病気は思ってた以上に深刻で、手遅れになり亡くなった。妹に使えなかったその大金を子供たちに寄附して…そして、いつしか盗作がバレたんだ』
『キース…そんな理由があったんだ』
『だから理由はどうあれ、盗作した事に変わりない…事実なんだ』
キースを思い詰めた感じで言った。
『キース。盗作したのは事実だとしても、妹を助けたかったお前の気持ちは良くわかる。今お前がここで音楽を辞めれば、お前は盗作したという事実から逃げる事になるぞ』
シュンが屋上の入口から歩いて来た。