ミュージック・ラブ〜君がくれた歌〜
『だから、大好きだったパパを追い詰めたアイツを許せなくて…。だけど、殺してやりたいくらい憎かったはずなのに、アイツの傍にいた小さい娘の顔見たら…アイツを殺せなかった。…あんな奴でも、アイツが死ねば子供はきっと悲しむから…』
リカは目に涙を浮かべて里菜の方を振り返った。
『リカ…。殺さなくて良かったんだよ。もしその政治家を殺してたら、その子供もきっと今のリカみたいな気持ちになってた』
里菜はリカの涙を自分の服のそでで拭った。
『こ、こんな苦しい思いは…あたしだけで十分だよね…』
リカは元気なく言った。
『リカがドラッグに手を出したのって…もしかして、その苦しみから逃れるために!?』
里菜がそう言うと、リカは静かにうなづいた。
『ねぇ、里菜。二人でレディース率いてた頃が1番楽しかったね。あの頃に…戻りたいな…』
リカは空を見上げ涙を流した。
『リカ…』
里菜は呟いた。
そしてリカは涙を拭いて、突然古びた柵を乗り越えた。
『里菜。最後にあんたに会えて本当に良かった』
リカはニコッと笑った。