桜-cherry rain-雨
「桜、」
パタパタと色褪せたカーテンを揺らす、冷たい冬の風。
それに乗って届いたのは
もう何度も心に刻んだ、彼の声。
「なーにー。」
本当は今すぐにでも振り向きたいのに、素直になれないあたしは携帯をいじりながら
至極、やる気のない返事を投げる。
……何故って?
理由は簡単だ。
「…リナがさぁ、」
「んもぉ、またぁ?」
そんな話
聞きたくないから。
パタン、と携帯を閉じて泉を見上げると
「そんな言い方すんなよ~。こんな事、桜にしか相談出来ないんだからさぁ。」
なんてお決まりの言葉を引っ提げて、弱々しく溜め息を吐き出した。
だから
あたしは思いっきり大きな溜め息を落として、またお決まりの言葉を続けるんだ。
「…わぁかったよ。リナに言っておくから。」
「マジで!?さんきゅーっ!」
耳を塞ぎたくなる泉の言葉は
あと、何回あたしの心を踏み倒すのだろう。
あとどのくらい傷を負えば、この痛みは
想いを、気持ちを
殺してくれるの?