狂愛~狂うほどに君を~
千が一冊の本を目の前の木のテーブルに置く。
『この本は先祖代々天界について調査したものをデータ化し、まとめたものだ』
つまり、この本の中身はかなり正確なもの。
リアムがそっと手にとり、ページをめくっていく。
『うん、よく調べてるね』
リアムも納得の正確さというわけだ。
『このセラフィムに関する記述だが・・・』
リアムの開いたページの上段を指さし、話し始める千。
セラフィムとは天使の九階級のうち最上であり
三対六枚の翼を持ち、
一対で頭を、
一対で体を隠し、
残り一対の翼で羽ばたくとされている。
また熾天使ともよび、熾(燃える)という意味があり神への愛で体が燃えるのが特徴。
『ゆずが蜘蛛の毒にやられたとき、三対六枚の燃えるように光った翼がゆずの体を包んだ。この記述によれば、ゆずがセラフィムであると思われるが・・・治癒力があるとはされていない。リアム、いったいゆずは何者だ』
それに加え、ゆずは自身を人間だと思い込んでいるのだ。
ゆずを拾ったとき聞き出したのは帰る家がないということだけ。
『ゆずの過去が、知りたい』
千の真剣な目。
『僕が、ゆずの過去を教えたら・・千はゆずを救ってくれる?ちゃんと守ってくれるの?』
リアムの瞳に悲しみの色が灯る。