狂愛~狂うほどに君を~
『リリィ様だっ!オレっちずっと・・会いたかったんです!』
イアンは嬉しそうにゆずに抱き着いた。
なんとなく、リアムとの出会いを思い出すような感覚に陥るゆず。
『私は・・ゆずだよ?』
『リリィ様・・・やっぱりオレっちのこと忘れちゃったんだ・・・』
しょぼんとなってしまったイアン。
『リアムも、私をリリィって呼んでたの・・私の本当の名前はリリィなの・・?』
『リリィ様・・・』
ゆずの困惑の仕方にイアンはどうしていいか分からなかった。
『ああ、やはり・・イアンの記憶が戻ったようですね』
『泉さん?』
気まずい空気の中に現れたのは肩にマクベスをのせた泉だった。
『一部始終・・みさせていただいていましたが、ゆずちゃんからのキスがイアンの記憶の欠片だったようですね』
『どういうことですか?』
『イアンもゆずちゃん同様に一部の記憶を失っていたんですよ・・・。ゆずちゃんのことだけを。その記憶を思い出すために必要な記憶の欠片が、ゆずちゃんからのキスだったのでしょうね』
イアンがルーカスに記憶を操られてしまっていたのはリリィに関することだけだった。
僕としてはゆずちゃんの記憶の欠片をイアンがもっているのではないかと踏んでいたんですが・・・意外な結果になってしまいましたねぇ。
それに加え、ゆずちゃんの不安を煽ってしまったようなものですし・・。
『私、本当に自分のこと何も分かってないんですね・・・。記憶の欠片って一体どうしたら集まるんですか!?どこにあるんですか!?』
拳を握りしめて叫ぶゆずに、どう声をかけていいのか分からない泉とイアン。
マクベスは動揺することもなくただ冷静にその場を見つめていた。
『落ち着け』
気配を誰にも感じさせずに現れた千はゆずの後ろにたち、手のひらでゆずの視界を奪った。
『まだ何も始まっちゃいない。大丈夫だ。お前ならきっと記憶の欠片を集めきることが出来る。今ここで喚こうが記憶を取り戻すことは出来ないし、何も事は変わらない。不安になるのは仕方のないことだが・・・取り乱して良い方向に事が運ぶことはないだろ』
諭すように喋る千のおかげで少しゆずは冷静になった。
そもそも自分の我儘でみんなを巻き込んでしまっているのに・・私、最低だ。
『ごめんなさい・・・』