狂愛~狂うほどに君を~
切ない想い
千が予定を変更して向かうのは自分の家、屋敷だ。
帰り道。
ゆずと千はずっと無言。
けれど2人の間に気まずい雰囲気は流れてはいなかった。
2人の間には穏やかな時が存在していた。
その穏やかな時に身を委ねていたゆずは車の中でいつのまにか眠ってしまっていた。
『ゆず・・・。』
思わず千は手を伸ばす。
その穏やかな寝顔に触れたいと
その白い肌に触れてみたいと
その愛しくさえ感じる存在に触れてみたいと思った。
けれど、その穏やかな表情を壊してはいけない。
白い肌を汚してはいけない。
愛しいという感情を持ってはいけない。
それを千は知っていた。
だからゆずに触れるギリギリで手を止めた。
千は悪魔で。
ゆずは人間。
そう思い知ることが怖くて。