狂愛~狂うほどに君を~
『千、どこへ行くのですか?』
長い廊下を少し速めに歩いていた千に泉は声をかける。
『…しばらく帰らない。』
たった一言告げると千は更に加速し、屋敷の出口の方へと向かった。
『千…。本当に良いのですか?』
泉は千の言葉の意味をすぐに理解していた。
千の中に生まれた感情。
それがなにを意味するか。
解っているからこそ引き止められなかったのだ。
千に生まれてしまった“愛しい”という感情。
けれどそれは赦されないこと。
お互いが傷つくこと。
泉は千の一言で全て理解してしまったのだ。