狂愛~狂うほどに君を~
泉が運転する車の中。
ずっと無言だった。
何を話せばいいの分からない。
無理に話しかけて空元気を出させることも
ゆずの地雷を踏んでしまうことも
泉には怖かった。
けれど、そんな沈黙は以外にもゆずの方から破られた。
『泉さん・・。すいません。嫌な思いをさせてしまっていますね・・。』
助手席に座るゆずは窓の外を見つめたまま口を動かす。
ずっと分かっていた。
泉が自分に気を使っていること。
明らかに自分は腫れものだったこと。
けれど
ずっと不安だった。
ずっと千のことばかり考えていた。
だから泉のその気遣いに甘えてしまった。
ゆずは心の奥底から反省している。
それは泉にもすぐ伝わった。
『いいんですよ?辛いなら辛いと言って泣きたいなら泣けばいい・・。僕はいつでも傍にいるから』
本当に
本当に優しい声でそう言うから
優しい温もりでゆずの手を包み込むから
ゆずは一筋の雫を流すことが出来た。