狂愛~狂うほどに君を~
泉はゆずの部屋まで駆けつけると、ドアを開けることを躊躇ってしまった。
ゆずが千を求めていたことは一目瞭然だったからだ。
千がいなくなってからずっと泉に求めた優しさは、千の面影を探していた。
今、自分が邪魔してしまって良いのだろうか。
けれど・・今日の千の気配は明らかにおかしいのだ。
前の千ならばこの人間界で羽を使うことはほぼ無かった。
こんなに気配をチラつかせて帰ってくることもなかった。
あるとしたらそれは・・・堕ちそうなトキ。
泉はそんな認識だった。
『ゆずっ!!』
『千さん?!』
けれど、部屋の中から聞こえてきた千の声は思ったよりも柔らかかった。
大丈夫・・なのですよね?
そっと開けたドアを覗いた泉。
見えたのはお互いが抱きしめ合う姿だった。
『余計なお世話でしたかね・・・。』
泉はその場を去って行った。