愛しのご主人様




「痛そー…立てるか?」


陽岡桐弥は、あたしの腕を掴んで立ち上がらせた。



「いっ…」


た――――い!!


「…歩けるか…?」


うぅ…。

痛すぎて無理です……。


なんてことも言えずに「だっ大丈夫です」なんて笑って見せた。



「…嘘」


「へ……?」


「つけないタイプだろ?」



陽岡さんはニコリと笑うと、ヒョイッとあたしをお姫様抱っこした。


「あっあの!?」

いきなりのお姫様抱っこにたじたじなあたし。


そんなあたしを知らんぷりし、


「お、さすが猫だな。
持ち運びやすい軽さ♪」


…なんて言って陽岡さんは運び続ける。



< 30 / 94 >

この作品をシェア

pagetop