愛しのご主人様



陽岡さんはしばらく考え込んで、「そうだな」と話し始めた。


「とりあえず…お前、気にいったの」


「ほぇ…」

気に入った…?


「なーんかビラ配ってる時はなんとも思わなくて、そのまま通り過ぎようと思ったら。
目の前でこけるから」


「う…」

陽岡さんはニッと笑って「別にいいけど」と付け加えた。


「こけてうずくまってるお前見たらなんか野良猫みたいに見えて。
ほっとけなくて」


「……」

なんだか恥ずかしくて無言のままうつむいた。


「涙目で強がってる猫…なんか可愛くて。
傍に置いたら面白いかななんて」


か…可愛い!?

今度こそ、あたしのことだよね…!?



「それが雪乃を選んだ理由」


陽岡さんはそう言うと立ち上がり、手を上に伸ばし伸びをした。




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