‐Fear‐
 ガチャ。
 理恵菜が自分のアパートのドアの鍵を開ける。
と、そこにはYシャツ姿でソファーに座りながらテレビを見ている男がいた。

「来てたんだ。今日仕事は?」

「抜け出して来ちゃったぃ。なぁ…今日警察署に来なかった?」

「…行ったわ。ごめんね、急な話だったし忙しかったから。」

「別にいいけど。多重人格のガキんとこ?俺の担当の事件だし…。すごい偶然だな。」

「そうね…。たまたま私が受け持つ事になったから。」

 理恵菜と日比野が付き合っていた事など知らない。
ややこしくなるだけだ、と理恵菜は日比野の依頼だと彼氏に言わなかった。

「ほいじゃ、また仕事行ってくるかな。」

「もう?大変ね…頑張ってね。吉岡刑事。」

「あいよ。」

 軽く敬礼して、男は部屋から出て行った。
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