‐Fear‐
 夏休みの初日、妹の香澄は「勉強会」で友達の家にお泊りに行っていた。
朝、勉強会なのにニコニコしながら玄関を出て行き、手には勉強道具らしきものはなかったのを思い出して優太は少し羨ましくなった。

 別に友達がいないわけではない。が、特に親友がいるわけでもない。
ただ友達に会いに行くだけであんな笑顔を浮かべられる香澄が羨ましかった。
そして、一晩親と一緒に居なくて済むのも羨ましかった。

 両親が離婚して、すぐ母は年下の男と再婚した。
まだ一年…嫌いではないが家族という気はしない。
元から家族関係気薄だったのに他人が入り込んできた…どちらかというと「どうでもいい」という感じに近い。


 今晩も特に会話はない夕食を済ませ、優太はすぐ自分の部屋に戻った。
今日から夏休み。時間も気にせずネット検索ができる。
そう思ってパソコンに向かっていた優太だったが、そんな時こそ眠くなるもの。
優太もいつしかベッドに潜り込んで眠ってしまった。



 朝、ぱっと目が覚めた。

「よく寝たなぁ…。」

 そう呟くほど熟睡してしまった。時計を見ると、ほぼ10時丁度。

「ご飯あるかな?」

 優太はふらふらとリビングに向かった。


!!


 テレビ、テーブル、ソファー、床一面の血と無惨な姿の母と義父。

 言葉が出なかった。

 優太はしばらく呆然とその場に立ち尽くしていた。
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