‐Fear‐
 「ねぇ!あのね、今日ね…。」

 吉岡の部屋。理恵菜がキッチンで料理を作っている。
吉岡はソファーで煙草を吸いながらテレビを見ている。

「あ?何~?」

「今日、優太君のお父さんの所行ったんだけど…。」

「何だよ、お互い仕事の話はしないんじゃなかったのか!?」

「違うのよ、めちゃくちゃムカつくのよ!無表情で人を馬鹿にしたような話し方してさ!優太君には悪いけど…ありゃ別れるわ。」

「そうか…まぁ、俺らが行った時もほとんど話聞いてくれなかったからな。医者なんてどいつも冷たいんだよ。」

「あら、そんな事ないわよ。」

「ん!?」

「あ、いや何でもない。」

 一瞬、日比野の顔が浮かんだ理恵菜。
最近は吉岡よりも会っている。
でもそれはもちろん仕事上の話。

 モトサヤなんて格好悪いわ。
私は前を進むの。

 鶏の唐揚げを焦がしながら理恵菜はそんな事を思っていた。
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