‐Ｆｅａｒ‐

　街の牛丼屋。
昼時も過ぎて人もまばらな店内に干潟と吉岡が遅めの昼食をとっていた。

「たいして…進展しませんねぇ、この事件。」

　吉岡がもごもご牛丼を食べながら話している。
干潟は食べ終わって茶をすすっている。

「このままだと自殺で処理されちまうわ。どうもなぁ…何か臭うんだが。」

「干潟さんは他殺だと思っているんですか？」

「お前、自殺するのに自分で腹刺すか？」

「あ～…やっぱ首吊りますかねぇ？」

　ピッピリッピィ～　ピ～リリ～

　間の抜けた音楽が鳴る。
吉岡の携帯電話だ。

「出んのか？」

「いえ、メールです。え～と…。」

「ったく…女からか？」

「ふ～ん。親がしばらくこっちいるから家に来るなですって。」

「はは、さびしいな。デートも出来んか？」

「いえ、今はデートどころじゃないですしね。」

　吉岡は携帯電話を置き、残りの牛丼を平らげた。