‐Ｆｅａｒ‐

　「ただいま。」

　その声が聞こえると、リビングでテレビを見ていた優太はすぐ玄関に行き理恵菜を出迎えた。

「おかえりなさい。」

「どう？くつろいでた？」

「あ、はい。すいません。」

「ふふ、謝らなくていいのよ。ちょっと待ってねご飯作るから。」



　とても懐かしい気がした。
キッチンで料理を作る音。みそ汁の匂い…。
忘れていた“温もり”みたいなものがそこにはあった。

　母さん…。

　思い出さずにはいられない。
寂しさ、悲しみみたいなものが込み上げてくるのを優太はぐっと我慢した。


　夕食を食べ終え、優太は理恵菜に聞いた。

「今日はどうだったんですか？」

「うん、新島英明のお母さんはアリバイもあるし、とても自分の息子を殺したとは思えない。殺されたとしても他に犯人がいるわね。」

「そうですか。」

「…優太君。あなたのご両親を殺した犯人と同じ可能性もあるわ。もう一度、しっかりあの事件を見つめ直す必要があるのかもしれない。」

「…はい。」

「辛いかもしれないけど…明日、優太君のお家に行ってみましょうか？」

「え？あ、はい。わかりました…。」