‐Fear‐
 カップに残っていたコーヒーを飲み干し、日比野はふーっと息を吐いた。

「俺の先生。師匠みたいな人。その人も橘和雄と言うんだ。」

「え!?まさか…。あ、でも前は大学病院にいたみたい。」

「東亜医大だろ?」

「そういえば…。」

「なんて事だ。橘先生が優太君の父親…。」

「信じられない。あいつとあなたがそんな仲だったなんて。」

「…橘先生はな、精神科教授。専門は…解離性同一性障害についてだ。」

「え!?」

「その橘先生の息子が…多重人格!?そんな馬鹿な…。」

「優太君は違うわよ!」

 思わず立ち上がる理恵菜。

「…理恵菜。橘先生の住所教えてくれ。」

「え?」

「会いに行ってくる。」
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