‐Fear‐
 街のコーヒー屋で理恵菜と男が話している。志水だ。

「すいません、急にお呼びして。」

「いえ、こちらこそ。本当は優太君も連れて来れば良かったのですが…。」

「こうして会えて話が伺えればいいですよ。優太君は元気ですか?」

「はい。事件のショックもありましたが、今は大丈夫です。」

「そうですか。安心しました。優太君の担任なのに何もできなくて情けない気持ちでいっぱいでしたが…でも今はそっとしておいた方が良さそうですね。」

「ええ…。あの、優太君は特に仲の良い友達とかはいましたか?」

「特に…はいないですかね。でも皆と仲良く話はしていましたよ。」

「そうですか。いえ、心配して連絡してくる友達もいないですし、本人もそういう話とかしないので、友達がいないのかと思ったんです。」

「…なるほど。寂しがっているかもしれませんね。」


 寂しがってはいない。優太君は友達がいなくても構わないみたい…。友達ができれば少しは変わるのにな。

 理恵菜は紅茶を飲み干し、カップを置いた。
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