‐Fear‐
 あの事件の日以来の再会だった。
思わず優太は声をつまらせた。

「香澄…。」

「お兄ちゃん…。」


 しばしの沈黙。


「あ、先生はいない方がいいかな?今日はありがとう、優太君。」

「…あ、はい。」

 その場を立ち去る志水。
代わりに香澄が優太の隣に座る。

「…元気?」

「うん、香澄は?」

「元気だよ。」


 またしばしの沈黙。


「…お兄ちゃん、ウチに来ない?」

「え?」

「一緒に暮らそうよ。」

 いつの間にか涙ぐんでいる香澄。

「まだ…駄目なんだ。もう少し、待ってて。」

 静かに立ち上がり、去ろうとする優太。

「お兄ちゃん!ごめんね。あの時…、ひどい事言って。ごめんね。もう…本当の家族はお兄ちゃんしかいないの!だから…。」

「気にしてないよ。怒ってるわけでもない。ただ…まだ帰れないんだ。」

「お兄ちゃん!!」

 優太は一度も振り向かずに去っていった。
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