‐Fear‐
 あの事件からしばらく経ち、捜査本部は解体されていた。
小林家、新島英明の事件は自殺で処理されかけていたからだ。
 だが、その日、干潟と吉岡は署長室に呼ばれた。

「小林優太はどうしている?」

 髭を生やした恰幅のいい体格をした署長が干潟に話しかける。

「え?あぁ…、親戚の家に妹と暮らしてますが。」

「ふむ…。」

「何か?」

「疑ってたわりには泳がせ過ぎではないか?白なら白で謝罪せねばならんしな…。」

「えぇ…。しかし包丁を刺して自殺とは…。他殺の可能性がありますが…。」

「なら真犯人を見つけろ。」



 署内 - 休憩所

「犯人がわかれば苦労はせんわ。」

 コーヒーを飲んでいる干潟と吉岡。干潟はトントンと机を指で叩いている。

「まぁまぁ、イライラしないでください。煙草でも吸って…。」

「ふざけるんじゃねぇ!禁煙記録途絶えさす気か!?」

「はは。我慢は身体に毒ですよ。」

「ふん。そういえば、あの弁護士の姉ちゃんはどうしてるんだ?」

「…さぁ?何してるんですかね。」

 吉岡はコーヒーの紙コップをごみ箱に投げた。
それはその小さな穴に見事に吸い込まれた。
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