‐Fear‐
 まだ二人とも学生の頃。勉強ばかりしていたけど、あの日々は輝いていた。
青春時代が夢みたいだったなんて後から思う事だ。確か昔そんな歌もあったなぁ…。

 街中で吉岡は煙草をふかしながらそんな事を思っていた。
そして、スーツのポケットから携帯電話を取り出した。


 プルル…


「よぉ。」

「ん、なぁに?」

「いま暇か?」

「ごめん。まだ仕事なの。今日はもう終わり?」

「ああ。後で家行っていいか?」

「だから駄目だって言ってるでしょ?私が行くから。」

「ん、じゃいいや。また電話するよ。」

「ちょっ…。」


 ピッ。


 煙草をもみ消し、吉岡は日の暮れかけた空の下、ゆっくりと歩き出した。
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